Winchester  M70

New  Black  Shadow

  「ライフルマンのライフル」言われたM70は1964年以前に製造された通称プリ64です。そして、その現代版がSPRやBSです。KTWはM70のBS(ブラックシャドウ)をマイナーチェンジし、New・BSとして発売しました。

【仕様】

全 長:1,140㎜

重 量:2,800g

口 径:6㎜BB

装弾数:22発

機 構:ボルト式エアーコッキング

付属品:スコープマウントベース、予備マガジン

価 格:¥78,000(税別)

発売日:2025年9月10日


 銃口部。マズル径は17㎜。真鍮インナーバレルはマズルまで伸びた495㎜。現在発売中のKTW製品最長です。

ボルト後端部。ボルトハンドル、ボルトリリースレバー、ボルトロックボタン、ファイアリングピンがあります。M70特有のデザインを再現しています。

ラバーバットプレートとグラスファイバー入り樹脂製ストック。M70のポリマーストックを再現しています。


トリガーガード前部のボタンを押してマガジンプレートを開きます。

マガジンを写真のように差し込みます。奥まで入れ、BB弾がカチャツとチャンバーに送られる音がするまで押し込みます。

マガジンはきれいにダブルカアラムに並べば最大22発まで入りますが、そうならない時もあるので20発ぐらいにして下さい。


付属のスコープマウントベース(幅21.2㎜)は接着とネジ止めで固定しています。好みのスコープとマウントリングをご使用ください。

ボルトストロークは90㎜。0.25gBB弾で81.5m/sec(0.83ジュール)基準で製造しています。

セフティーレバーを後方へクリックすると、トリガーとボルトハンドルがロックします。


試射的が付属します。5発が直径30㎜の円に入った製品を合格にして出荷しています。BB弾は写真にある一般的な市販品を使用していて、またこれがおすすめの適合弾です。

 

試射方法。10m先のA4サイズコピー用紙にレーザービームを当て、スコープでここを狙って5発撃ちこみます。5発の弾痕に30㎜径の定規を当て、5発全部が円内に入れば合格です。距離10mなのでホップは弱めです。この状態で出荷しています。



【分解】

① トリガーガード下部の2本のネジを外すとバレル・レシーバーが外れます。

② ボルトリリースレバーを押してボルトシリンダーを抜いてから、レシーバー前端下部の止めネジを外し、アウターバレルを外します。なお、レシーバーとアウターバレルは、止めネジの穴位置がこの一対のみにしか合いません。

③ ホップメカブロックの分離は、まずM3×12ネジを外し、ホップダイヤルをホップアジャストピースから外れるまで左に回します。なお、この分解以降は組み立てが面倒なので、よほどのことがない限りおすすめできません。


④ アウターバレルの後端をたたいてインナーバレル部を抜き出します。

⑤ チャンバー部はこれらのパーツが外れます。

⑥ インナーバレルとチャンバー部を固定するM3×3ホーローネジを外します。


⑦ チャンバースリーブとホップアジャストピース、ホップディスクが外れます。

⑧ インナーバレルを抜くと、チャンバーパッキンも出てきます。チャンバーパッキンを交換しようとされる方は多いと思いますが、元に戻す組立調整作業は面倒です。

⑨ トリガーメカ部はマガジン板スプリングを外してから、写真の4本のネジ(M3×8が2本、M3×6が2本)を外すとレシーバーから外れます。


⑩ トリガーメカ内部。ここは分解しない方がよいと思います。



【別売品】


 フロントサイト。銃口から10㎜の位置に取り付けます。M70本体のスコープマウントベースは付いたままでサイティングに干渉しません。リアサイトも同じです。スコープを付けた時も同じです。

 リアサイト。レシーバー前端から120㎜の位置に取り付けます。フロントサイトとリアサイトは、オープンサイトSETで販売しています。¥4,800。取り付けは接着です。コニシボンドG17がおすすめで、接着時、輪ゴムでしっかり止めて垂直を出し固定します。サイト合わせ後、照門板と照星ガードを瞬間接着剤で固定することをお勧めします。

 リアスイベルリング。


 フロントスイベルリング。フロントとリアのスイベルリングは同じもので、2個SETで販売しています。ストック前後のスイベルリング用金具に簡単に取り付けられます。前後2個セット¥1,800

 スコープマウントリング(1インチ用)2個SET。¥1,000。イサカM37別売スコープマウントベースと兼用です。M70 Pre’64では使用できません。


  SPRストック(マクミランA4ストック)にNew BSを付けました。リアのストックボルトにM5のスプリングワッシャーが必要ですが、問題なく取り付け可能です。BSはセミブルバレルですが、SPRのマズル径1インチ(25.4㎜)のフルブルバレルとは大きく違います。SPRバレルと交換する場合、レシーバーとの止めネジ穴位置が多少異なる場合があるため、加工が必要となります。

SPRストック¥14,000

SPRブルバレル¥14,500

 M70 Pre'64の木製ストックを付けました。ストックボルトは前後ともそのまま使用できます。Pre’64のアウターバレル・マズル径は16㎜です。BSは17㎜で1㎜大きくなっていますが、ストックと接する部分の径はPre’64と同じ設計ですので、ベディングに問題はありません。

 M70 プリ64木製ストック¥30,000

*  余談になります。木材の高騰が数年前から始まりました(ウッドショック)。米国由来の銃はアメリカンウォールナットに限るため、KTWとしてはそれを守ります。今は時期を待つまで、イサカやウィンチェスターのアメリカンウォールナットの在庫を販売しています。

 

 

 

 チェッカリングは外周全面彫り。今は懐かしい手彫りの時代でした。機械では今だにこの彫り方はできません。



 M70 Pre’64 の話

 1925年、ウィンチェスター社は軍用制式弾スプリングフィールド3006をケース・ネックダウン(本体サイズは同じで先端の弾頭部を小さく)した.270という新口径を開発し、その口径でM54と名付けたボルトアクションライフルを発売する。

 このモデルが完璧に仕上がったのが1937年発売のM70だった。M70の口径は.270だけではなく、3006300WINマグナムなど多種にわたり、狩猟用ライフルとして多くのハンターに愛用された。「THE RIFLEMAN'S RIFLE」と呼ばれたのはこのころだった。

 1960年代、ベトナムで戦争が始まると、介入した米軍は敵の狙撃による被害を無視できなくなった。米軍は対抗するための狙撃手組織を作ることになり、海兵隊のランド少佐がその任についた。少佐は射撃優秀な兵士を集め、使用する銃はM70と決める。ここで、海兵隊MP出身のハフコック軍曹が頭角を現した。軍曹は最前線で数々の狙撃任務を成功させ、これが北ベトナム軍の知ることとなり懸賞金をかけられるまでになった。軍曹とM70の逸話が2つある。

 1つはコブラと呼ばれて恐れられた北のスナイパーと対峙したときのこと。軍曹はコブラのモシンナガン狙撃銃スコープの小さな対物レンズがキラリと光ったのを見逃さなかった。そしてそのスコープを貫通させ、コブラの頭を撃ち抜く。  

  2つ目は、北の基地潜入の極秘命令が下った時のこと。ヘリで降下後、軍曹は3日間ほふく前進し、敵陣深く入り込む。そして4日目の朝、体操をしていた北の将軍がM70のユナートル・スコープに入った。軍曹は1発で仕留め、敵が大混乱する中、無事帰還した。

 こうして狙撃銃としても名声を得たM70だが、戦争が拡大する中、軍に納入するM70の品質が徐々に落ちていく。かつての勢いは無いウィンチェスター社としては、機能と性能だけは維持しつつも外装や仕上げなどで軍納入価格なりのものを造らざるを得ない事情があったのだろう。 これにより、M701964年までに製造されたもの(いわゆるPre’64)しか名銃として認められない風潮となっていく。その後、米軍はレミントン社のM700を選ぶことになる。  

 ここでウィンチェスターとレミントンがかつて連発ショットガンで競った話を思い出す。  

 ウィンチェスターは、ジョンMブローニングに依頼し、M1887レバーアクション・ショットガンを発売する。ブローニングはポンプアクションをやりたかったという。ブローニングはその後、自社でM1890ポンプアクション・ライフルを発売した。M1890は小口径の子供用だったが、その操作性と速射性能は抜群で、のちの自働銃に至る新時代を予想させるものだった。これを見たウィンチェスターはブローニングにポンプアクションで新たにショットガン開発を依頼する。のちにトレンチガンと呼ばれるM1897である。  

 一方、レミントンは1907年、ジョンDペダーセン設計のポンプアクション・ショットガンM10を発売した。これがのちにM31となり、そしてM870ウィングマスターとなり、ポンプアクション・ショットガンではウィンチェスターを越える名声を得ることとなった。  

 M70 Pre'64が中古市場で手に入りにくくなった1990年代、復刻版がクラシックモデルとして発売された。機構と性能、それに美しい木製ストックはM70 Pre'64の再来であり、価格も安く、大評判となった。一方、昔を知る人はこの復刻版がロストワックス(精密鋳造)パーツを多用した今風の造りであることに違和感を持った。

 しかし、現在はロストワックス,CNC加工, ポリマーストックと、銃の製造方法は大きく進化している。 M70もその流れの中にあるのだ。 M70は現在、ベルギーのFN社とその傘下のメーカーで製造されている。Pre'64の名を付けるにふさわしい品質、いや、それ以上のM70を新しい技術で造り続けていることはまちがいない。                                                                                         文:壇 植遜