九六式軽機関銃ができるまで②

この項は新企画です。KTWの製造過程を皆さんに公開します。ヤスリ1本からスタートしたKTWの製品作りですが、20年以上経った今でも似たようなものです。これを見てメーカーになろうという方が1人でも現れれば幸いです。

7月のころのレシーバー原型です。モナカ構造です。3mm厚の塩ビ板を2枚重ねで外形を決め、左右に分けて立体化していきました。

レシーバーをアルミ鋳物にすることを決定したのが8月初旬でした。当初プラで行く計画が変更となり、いろいろ調整してなんとかここまでもってきました。

中身はマルイさんのスコルピオンです。小ぶりな九六式にやっと収まりました。発射速度550発/分の九六式にピタリの音をだしていると思います。  9月2日



レシーバー左側面。チャージングハンドル部はメタル製になり、スライドします。蹴子(エジェクター)はダミーですが、カバー(これから造る)はレシーバー左右結合ボルト3つのうちのひとつを隠す役目をします。残り2つのボルトは中央下部と銃身止めのボルトナットです。なお、この銃身止めは実際に銃身を止めていますが、ボルトナット式は九六式の後期型です。初期型はワンタッチ脱着のレバーハンドル式でした。しかし強度に問題が起き、このボルトナットに改良されたと言われています。リアサイトは今苦労して造っています。


レシーバー右側面。弾倉室蓋蹴出口蓋があるだけで、さっぱりしています。この2つのパーツはキャストのメタル製になります。両者共スプリングがあり、それぞれテンションがかかっています。弾倉室蓋は開いた状態でテンションフリーで、閉める際にテンションがかかります。蹴出口蓋は初期の九六式では閉鎖状態がテンションフリーで、射撃時、排莢のたびに薬莢が蓋を押して開く方式でした。さすがにこれには問題があったようで、後期型はスプリングを逆にし、発射時に開きっぱなしにしました。なお、KTWはこれだけは前期型でいきます。閉まっている蓋を開けてホップ調整します。     9月6日



蹴子覆と照尺が付きました。塩ビで造ったキャスト用マスターで、共に量産では全パーツがホワイトメタル製になります。

照尺はほぼ実銃通りのパーツ構成で造りました。上下、左右ともクリック可動し、目盛りも実銃通りに付いています。 9月11日



マガジンです。M16系の多弾数マガジンをいくつかつぶし、曲げたり伸ばしたりして九六式マガジンに移植しました。当初シングルカアラムで考えていましたが、これだと70発ぐらいが限度なためダブルにして120連にしました。これをマスターにして、プラキャストで量産成型します。マガジンは2個付属させる予定です。


8月23日に紹介したダミーマガジンを、以前採寸等の取材でお世話になった旭川の北鎮記念館にシューティング・サプライさんを通して届けてもらったところ、ていねいな礼状と写真(左)が送られてきました。九九式軽機ですがうまく付き、何の違和感もなく展示ケースに収まっています。実物マガジンはまず手に入らないそうで、レプリカでもそっくりなので大変喜んでいただきました。でもこの九九式、どう見ても九六式にしか見えませんが、ちゃんと九九式の刻印がありました。いろいろなタイプがあったようです。9月16日



二脚、床尾板、アンダーレシーバーが今、鉄鋳物で量産のための砂型用金型製作中で、上の写真はそれ以外のマスターです。下の黄色パーツはホワイトメタル製になり金型は使いません。上の灰色パーツはマガジン以外、鉄とアルミ製になり砂型用の金型を造ります。マガジンはウレタン樹脂製で、金型は使いません。さて、鋳造品のマスターがすべてそろい、削り出し加工品の全図面も完成し、次に量産にかかるわけですが、ここまでは個人でもできます。しかし次の段階からは個人では出来ない世界に入ります。KTWの場合、ほとんどのパーツをそれぞれの分野のプロに外注します。これからはその過程を紹介していきましょう。
9月24日


先行していた二脚部と銃床前後部の鉄パーツが完成です。さっそく銃床部を加工して仮組みしてみました。鉄の鋳物が九六式の重厚なイメージを強調しているようで、素材と工法は正解だとおもいました。

物を造る型。セット取りで二脚パーツと銃床前後パーツがランダムに組み込まれています。型屋、石膏屋、加工屋の面々が鋳物屋さんに集合し、製作打ち合わせで盛り上がりました。 10月2日



アウターバレルの量産が外注さんで始まりました。最新のNC、CNCでは出来ないようで、20年前のNC旋盤でやっています。70年以上前、小倉造兵廠や南部製作所では手動の旋盤で削っていたわけですから、この九六式を造ろうとしてからというもの、昔の人たちは本当にエラかった思う今日この頃です。他の小物削りパーツもこの工場で製造進行中です。

こちらは50年前のフライス盤。でも精度は抜群です。インナーバレルは外注には出さずKTWで時間をかけて造ります。専門商社から仕入れた極上真鍮パイプを255mmにカットし、曲がりのないものを選び加工しています。加工後実射してさらにハネていき、製品になるのは5本に1本の割合です。ちなみにM70は1本の良品を造るのに9本捨てています。 10月21日



マガジンはまた変更が出ました。樹脂製から鉄板プレス製になったのです。近くの腕のイイ板金屋さんがガンバってくれて、プレスと溶接の組み合わせで感動の逸品に仕上げました。実物と同じ製法です。ただ、予定外のプレスの型代で上がったコストを抑えるため、弾倉容量は58連に落ちました。これで九六式は外観の全パーツが金属製になったということでこのことは勘弁してもらいましょう。マガジンは2つ付属します。   11月7日



外注さんの引き物パーツがすべて上がってきました。板金屋さんのプレスのマガジンも完納しました。本日、アルマイト処理の終わったアウターバレルの組み立てが完了したところです。マズル部は逆ネジが切ってあり消炎器がつけられ、また、銃口蓋の取り付け溝も切ってあります。ただ、これらのパーツは今回は付属しません。 11月28日



九六式の刻印です。レシーバー前方右側面に「造兵廠印」「九六式」「製造年」「番号」、そしてトリガーセフティの動く位置に「火」「安」とあります。良い出来で、打つのが楽しみです。

鉄、アルミ製品の元となる鋳物型がすべて上がり、テスト打ちの品がそろいました。この後の加工が大変な作業になります。そのため、手間を少しでも省くための型修正にこれから入ります。

メタルの全パーツも試作が上がってきました。ホワイトメタルという金属ですが、通常のものより強度があります。亜鉛合金と違い、永久に安定していることは三八式などで証明済みです。  12月8日